2016年7月5日火曜日

SF/SV, Boston and NY (2)

プラグアンドプレイ・テックセンター

「アクセラレーション・プログラム」



 プラグアンドプレイ・テックセンター(PNP、シリコンバレー)が力を入れているのが、スタートアップ企業の成長支援プログラム「アクセラレーション」である。

 スタートアップへのオフィス賃貸業からスタートしたPNPは、その後、自らスタートアップに投資するようになった。しかし、投資するだけでは、有望な企業であっても成功するとは限らない。そこで、技術アドバイス、事業方針・計画など経営相談対応、大企業や投資家とのマッチング機会などを1つのパッケージとして提供し、成長を加速する支援をはじめた。

 このような取り組みは、他のインキュベーション施設やベンチャーキャピタル、銀行などでも行われているが、PNPの強みは大企業とのマッチング機会の多さにある。スタートアップ企業400社が常時利用するPNPには、新しい技術を求めて日米欧の大企業が日々足を運ぶ。PNPは、毎日数回「ミートアップ」と呼ばれる場をつくり、スタートアップが大企業に技術を売り込む機会を提供している。ただし、全てのスタートアップがこれに参加できるわけではない。800社の申込のうち、エントリーできるのはわずか20社に過ぎない。専門スタッフによりきちんと選抜されていることが大企業にもPNPが支持される理由となっている。

 アクセラレーション・プログラムは、テーマ毎に複数の大企業がスポンサーとなり運営されている。現在、人気のテーマはフィンテックである。ドイツ銀行など世界から18機関と最も多くのスポンサーを集めており、日本からも三菱東京UFJや三井住友銀行などが参加している。

 フィンテックのスタートアップの例を紹介しよう。アクセラレーション・プログラム卒業後にPNPから投資を受けた最初のケースとなった「ファクトム」は、ビットコインの基盤技術であるブロックチェーンを使い、貸付記録、証券、保険、医療などあらゆる記録を分散的に管理するシステムを開発した。中国の不動産市場など、信用取引のインフラが未整備な市場でのビジネス展開を目指している。

 
ファクトム・ローレンスCMO
 
  現在プログラムに参加中の「ウィーアクツ」は、スマートフォンによる生体認証と位置情報とを組み合わせた本人確認により、パスワードを用いずに様々なアプリケーションにアクセスできる技術を開発し、世界各国の企業と実証実験を行っている。日本企業も関心を示しており、日本向けカスタマイズも検討しているという。

 フィンテックのプログラムを運営するのは、ディレクターのロビンソン氏32歳を筆頭に、平均年齢26~7歳の若いスタッフたちだ。起業の最前線で経験を積みながら目利き能力を鍛えた若い力が、シリコンバレーのエコシステムを支えている。


国際IT財団 http://www.ifit.or.jp

(初出:『生産性新聞』2016.7.5, 2500号)

0 件のコメント:

コメントを投稿